第34回
長崎市
「魚の美味しいまち」から「さしみシティ」へ
新鮮で美味しく、全国最多の250種以上の魚種を誇る長崎、四季折々の旬な魚が楽しめる水産都市として歩みを進めてきました。しかしながら、グラバー園や軍艦島など多くの観光名所やちゃんぽん、カステラなど名物料理の陰に隠れ、観光都市としての知名度の高さに比して長崎市の魚に対する観光客の認知度については、長崎の人がイメージするよりも低い状況が続いていました。
このため、長崎市では、「魚の美味しいまち長崎」の域外へのイメージ浸透や外貨獲得を目的に、様々な媒体を活用したPR、四季の美味しい魚提供店舗(以下「賛同店舗」という。)の登録を募るとともに、誘客に向けた賛同店舗の顕在化などに取り組み、長崎の魚の認知度は向上してきましたが、消費に結びついていないことや、具体的な食べ方がイメージしにくいなど様々なご意見をいただき、併せて地元での盛り上がり、機運醸成が十分ではなかった部分があると考えました。
この局面を打開するためのヒントを得ようと、魚の食べ方に関する市民の意識調査を実施したところ、市民が「最もおすすめしたい食べ方は刺身」、「来訪者にも刺身をすすめたい」とする回答が多数を占めたのです。
また、賛同店舗において、大多数が刺身をおすすめ料理として紹介している状況であったことから、市民が自慢する「刺身」を前面に推していくことで食べ方がイメージしやすくなるということ、さらに、市民が自慢する「刺身」を前面に推し出すことでシビックプライドの醸成にもつながるという考えになり、キャッチコピー「さしみシティ」を軸とした「さしみシティ推進事業」に取り組むこととしました。
この事業の目指す姿としては、【市民が「長崎の刺身が一番」と自慢している】、【賛同店舗が増加している】、【店舗のクオリティが向上している】、【さしみシティが観光コンテンツとして定着している】ことをイメージしており、いわばさしみシティの実現を企てようとするものなのです。「市民が自慢にしている・地元の機運醸成を図る」観点から「さしみシティプロジェクト認定制度」と「さしみシティ推進事業費補助金」による支援などに令和3年度から取り組んでいます。
「さしみシティプロジェクト認定制度」とは、さしみシティの実現に賛同した市民や事業者がキャッチコピー「さしみシティ」を用いて、自発的に行う長崎の魚の情報発信や消費拡大につながる活動について認定証を授与し、モチベーションアップにつなげるもので、居酒屋グループで着用する専用前掛け・マスクの作成、新鮮なさしみを冷凍していつでもお手軽に提供できる自販機、地元大学公認サークルでの魚料理創作とSNS発信などの取組みを認定したところです。
次に「さしみシティ推進事業費補助金」は、さしみシティのキャッチコピーやロゴマークを使用して商品開発やPR等に取り組む市民や事業者に対し、後押しするもので、長崎産の白身魚に合うポン酢の開発、自社で商品開発したサバサンド・サバ寿司の販売促進、魚料理店の紹介に特化したWEBサイトとSNSの構築を目指す「おさかなHEVENながさき」などの事業を採択しました。
また、長崎観光の舵取り役を担う長崎市DMOが一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会のなかに設置されたことから、誘客のための広域的な観光プロモーションを展開する長崎市DMOと連携を図り、養殖日本一を誇るトラフグをはじめとした長崎の魚の魅力について域外への情報発信を行っています。
さらに、令和4年秋には西九州新幹線の開業を迎えたことから、この好機を逃すことなく新幹線開業効果を最大化するための誘客促進についても、進めているところです。
長い海外との交流を通じ、長崎の食文化は、和華蘭(わからん)文化(和食、中華、オランダ・ポルトガルの南蛮料理)と称されるように多種多様な食文化が育まれてきました。
そのなかでも特に和食においては、卓袱料理、長崎雑煮、節分料理において、長崎の魚や鯨が大切な役割を担ってきました。
食の多様化に伴い、魚離れが進んでいると云われている今こそ「さしみシティ」を旗印に掲げ、刺身をはじめとした長崎の魚の魅力を広く伝え、長崎を訪れる方々に、「長崎に来たんだから刺身を食べなきゃね♪」と言ってもらえるようにこの事業を推進したいと考えています。