特三の漁港から

第30回

石巻市

石巻市は宮城県の北東部沿岸に位置し、平成17年4月1日に石巻地域1市6町が合併を経て、県内第二の人口を擁する市です。
古くから江戸廻米などの海運・舟運基地として大変な賑わいを見せ、伊達藩の統治下には、「奥州最大の米の集積港」として、全国的に知られた交易都市でした。
明治時代からは漁業のまちとして、昭和の時代になっても石巻工業港の開港で工業都市として発展を遂げてきました。
平成23年3月11日の東日本大震災から10年。甚大な被害を受けましたが、多くの方々のご支援をいただくとともに、市民が一丸となって石巻の復旧・復興に尽力してきました。

石巻漁港全景(平成27年6月撮影)

石巻漁港全景(平成27年6月撮影)

本市は、北からの寒流(親潮)と南からの暖流(黒潮)が交差するため、多種多様な水産物が漁獲される世界三大漁場「金華山沖」に近く、さらには北上川から植物プランクトンを多く含んだ栄養豊富な水が運ばれてくるため、養殖業も盛んです。
年間200種類以上もの水産物が水揚げされ、全国でも有数の水産都市石巻が誇る「石巻市水産物地方卸売市場石巻売場(石巻魚市場)」。
震災を乗り越え、水産庁の定める衛生管理基準のレベル3にも対応した先進的な高度衛生管理型の魚市場として平成27年9月に全面供用開始されました。

石巻市水産物地方卸売市場石巻売場全景

石巻市水産物地方卸売市場石巻売場全景(令和3年1月撮影)

高度衛生管理による先進的な魚市場

また、放射能による風評被害の対策として、日々の放射能検査も行うことで、消費者のみなさんに安全・安心な水産物を流通するための体制を整えています。

石巻魚市場の背後地には水産加工場を中心とした水産加工団地が形成されており、石巻魚市場に水揚げされた水産物は新鮮な状態で工場に運ばれ、様々な加工技術によって形を変え、全国・世界中の飲食店や食卓に並びます。

毎年10月には石巻魚市場を会場として「いしのまき大漁まつり」も開催されます。
鮮魚すくい取りや模擬セリ、水産物の特価販売など、毎年大盛り上がりのイベントです。

さらに、石巻ではホタテや牡蠣、ホヤ、ワカメ、ギンザケなどの養殖水産物も多く生産されています。
宮城県漁業協同組合の『石巻湾支所、石巻地区支所、石巻市東部支所』の3支所が生産する牡蠣は、海のエコラベルであるASC認証を平成30年に取得しています。
『ASC認証』とは、養殖業が引き起こす汚染など海の環境への悪影響や、劣悪な労働環境など地域社会での問題に関する厳しい要件をクリアした養殖場だけに与えられる国際的な認証制度です。

宮城県は広島に次ぐ牡蠣の生産量を誇りますが、宮城県で生産される牡蠣の過半数がこの3支所が生産する牡蠣です。

少し足を伸ばして鮎川地区。ここには捕鯨基地もあり、古くから鯨文化、鯨食文化も伝承されています。
令和元年7月に商業捕鯨が再開されたことや、震災により被災したホエールランドが令和2年にフルリニューアルオープンしました。
おしかホエールランドはクジラの生態や特徴、牡鹿半島における鯨文化を紹介する施設です。館内には日本有数のマッコウクジラや貴重なコククジラの骨格標本が展示されています。そして、大画面の迫力あるシアターでは自分も一緒にクジラと泳いでいるような感覚を味わいながら、クジラについて学ぶことができます。

ホエールランドのすぐ近くには昭和33年に大洋漁業㈱の大型高速捕鯨船の1番船として建造された第16利丸が展示されています。

大型高速捕鯨船の1番船として建造された第16利丸

震災から10年を迎えた石巻は、まだまだ復興途上ではありますが、着実に「新・水産都市石巻」を目指して道を歩んでいるので、ぜひ足を運んでみてください。