ご挨拶

我が国を取り囲む海には、暖流と寒流が流れ、豊かな漁場となっています。森や川とつながる藻場干潟などの浅い海は、生き物のゆりかごとして水産資源の再生産を支えています。津々浦々の漁港を拠点として様々な漁業が行われ、多くの種類の水産物が水揚げされています。漁業者が暮らす漁村では水産物を消費者に届けるための営みが行われています。

言うまでもなく水産物は私たちにとって重要な食料ですが、その生産を支える漁業の現場は、海域環境の変化、不漁、自然災害の脅威、人口減少や高齢化といった厳しい状況に直面しています。私たちが将来にわたり、水産物という海の恵みを享受していくため、すなわち水産物が安定的に供給されるためには、豊かな漁場と漁業の根拠地である漁港漁村が、その役割を果たしていくことが重要です。

近年、新鮮な水産物や海とのふれあいを求め多くの方が漁港漁村に訪れるようになり、報道などを通じて水産業への社会的な関心も高くなっています。地域色豊かな魚食文化は、海外も含めて高く評価されるようになり、漁業者と企業の協働による藻場干潟の保全活動が行われるなど、明るい兆しが見えています。盛り上がりをみせている海業は、地方創生の大きなチャンスです。

私たちは、地方公共団体、漁業関係者、関係企業の皆様とともに、水産業の基(もとい)である漁港、漁場、漁村及び水産都市の整備と発展を図り、水産物の安定供給と地域活性化に貢献するため、漁業の現場の声や地域の考えを踏まえ、政府や国会への提案や施策・予算の充実強化の要請を行うとともに、漁港漁場漁村に対する国民のご理解とご支持をいただくための活動に取り組んでいます。今後とも、漁港漁場協会に対するご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

公益社団法人 全国漁港漁場協会 会長 田中 郁也